新型コロナワクチンの接種方法、効果、副反応などについて解説します。Q&Aにもお答えしました。

こんにちは!女医サイクリストのもえまぐろです(*^^*)

今回は全く自転車ネタではありません(笑)

 

新型コロナウイルスのワクチンの接種が今月末から始まる見込みということで、「新型コロナウイルスのワクチンについてのQ&A」をpodcast配信させていただきました。

podcastを聞いてくれている方の知識の整理に役立ったらいいなぁという目的で録音しました。そのレジュメをこちらの記事でも公開しますので、ご興味のある方はぜひご覧になってください★

 

※2021年2月7日 時点の情報をもとに作成しています。

podcastリンク

apple podcast

https://podtail.com/ja/podcast/--cyclingradio/

 

目次

Q.新型コロナウイルスのワクチンってどんなワクチン?

 そもそもワクチンとは・・・

病原体に対する抗体産生を促し、感染症に対する免疫を獲得するためのもの。

感染症にかからないようにしたり、かかったとしても症状を和らげたりする働きがあります。

 

新型コロナウイルスのワクチンの特徴

現在、臨床試験段階にあるワクチンは60近くもあると言われていますが、今回は2021年2月5日に日本に輸入が承認されたファイザーという製薬会社のワクチンについて主にお話します。

このワクチンはウイルスの表面にある「スパイクタンパク」に対する抗体を作ることで促すことで免疫を獲得します。

スパイクタンパク・・・重要なのは「結合」と「侵入」を担う2つの構造。ウイルスの表面に2本の手があると想像してください。このうちのひとつはウイルスが我々の細胞にひっつくためのもの(=細胞をつかんで離さないイメージ)。そしてもう1つはウイルスが細胞と融合するためのもの(=ウイルスが細胞に入り込むイメージ)。「結合」と「侵入」のどちらもブロックするのが望ましいけれど、特に後者のほうが重要と考えられています。

※現在開発段階にあるワクチンはどれもこのスパイクタンパクを標的にしたものです。

 

ワクチンの接種方法

筋肉注射。2~3週間あけて二回接種します。

ちなみに皆さんに馴染みのあるインフルエンザワクチンは皮下注射です。

筋肉注射の方が少し深いところまで針を刺すので、一般的にはより痛いです。

(特にコロナワクチンは結構痛いそうです…)

Q.安全性は?

通常はワクチンをつくるには3~10年、少なくとも数年はかかると言われています。コロナワクチンが他のワクチンに比べてめちゃくちゃ速く作られたことを考えると、安全性に疑問をもつのは仕方ないと思います。

しかし、必要だから急げ~!といって、ずさんに製造されているわけではなくて、きちんと臨床試験をくぐり抜けて、わたしたちのもとに届いています。

臨床試験は健康な方や患者さんに協力してもらい、開発中のワクチンを実際に投与して行う試験で、その結果に基づいて、ワクチンの有効性や安全性などが審議されています。臨床試験には第1~3相まであって、第1相は数十人規模、第2相は数百人規模、第3相は数千人を対象にした大規模なもので、これを突破すると承認申請ができます。

コロナワクチンの第3相試験は数万人の参加者を含む他のワクチンのそれと同じくらいの規模で行われており、安全性の確認には十分だったと思われます。

※もちろん、免疫学・統計学・感染症・ウイルス学・ワクチン学の専門家による検証もされます。

 

Q.ワクチンの効果は?

発症予防効果は90%以上です(95%との報告もあります)。

これは、ワクチンを接種してない人と比較して発症リスクが10分の1になるという意味です。

この数字がどんなものかというと…なじみがあるインフルエンザでいうと、シーズンによって差があるものの約50%程度です。これと比較すると、インフルエンザワクチンを大きく上回る予防効果があることがわかると思います。

感染伝播を抑えるかについてはまだわかっていないですが、咳・鼻水などの症状を軽くすることでウイルスの飛散を防ぐことができるため、人から人への感染予防にも期待できるのではと考えられています。

Q.ワクチン接種は2回必要ですか?

そもそも2回接種する理由は免疫記憶を強化するためです。

小児ワクチンの多くは初回接種に続いて、2回目の接種を数週間後(あるいはワクチンによっては数年後)に行う必要があります。この追加接種により、免疫記憶が強化されます。この理由から2回接種が望ましいのです。

ファイザー社のワクチンは、1回接種でもその有効性は80~90%にも上る可能性があるらしい。

実際にイスラエルでは、1回だけの接種でも、接種した人の中で感染患者数が減少しています。1回の接種でもある程度免疫獲得が期待できそうです。

・・・でもワクチンを受けるならば、指定された回数は打つようにしましょう!

Q.遺伝情報に影響はないのですか?

ありません。このワクチンがmRNAワクチンという種類で、RNAとDNAの響きが似ているせいか?(←これは筆者の憶測)、ヒトのDNAに影響するのではないかという不安が生まれるのかもしれませんが、ありえません。

mRNAがDNAを変化させるためにはいくつかの関門を乗り越える必要があります。

具体的には、DNAを包んでいる細胞核という殻を突き破り、DNAに変化して、さらに我々がもともと持っているDNAに組み込まれるというステップを踏まないといけないです。mRNAワクチンは殻を突き破ることもできないし、DNAに変化するための逆転写酵素という酵素ももってないし、ワクチンの情報をDNAに組み込むためのインテグラーゼという酵素ももっていないです。

ここらへんを説明し始めると話が難しくなってきますが、mRNAワクチンがDNAを変化させるためには関門がいっぱいあって、そのそれぞれの関門を突破していく能力がmRNAワクチンにはない。つまり、遺伝情報を変えることは不可能です。

Q.副反応は?

接種部位の痛みや、頭痛・倦怠感・筋肉痛等がでると言われています。

特に接種部位の腫れや痛みは6~9割くらいの人で起こるそうです。

副反応は起こりえますが、他のワクチンと変わらない人数で臨床試験がなされていて、特に重大な副反応が起こりやすいとは言えないと思います。(そもそも軽微なものであればどんなワクチンだってあります。)

若い人の方が高齢者よりも副反応が出やすいらしいですが、もともと具合が悪い高齢者がワクチン接種後に熱が出たり嘔吐したりして亡くなったという報告もあるため、病気で身体が弱っている高齢者の方については打つかどうかは慎重に判断したほうが良さそうです。主治医がいるなら相談してみるとよいかもしれません。

ちなみにこの副反応とは別に、重度のアレルギー反応(=アナフィラキシーショック)が起こることも報告されており、頻度は10万人に1人だそうです。一般的なワクチンが100万人に1人といわれているのでそれと比較すると10倍起こりやすいですが、ある種の抗生剤では5000人に1人で起こることや、日常的に行われているヨード造影剤を使ったCT検査などでも20万人に1人の確率で起こることを考えると決してすごく高いわけではないと思います。

ちなみに、アナフィラキシーショックは接種後30分以内に起こることが多いので、心配な方は接種後30分間は病院に滞在されてから帰宅されるとよいと思います。アナフィラキシーショックのリスクを下げることはできませんが、対応が早ければ救命できる確率は高まります。

Q.変異種にもワクチンは効きますか?

効く場合もあるし、そうでない場合もあると思います。

現在製造されているワクチンは「スパイクタンパク」を標的にしているので、このスパイクタンパクの構造を変えるタイプの変異種には効果がないと思います。

でも現在のワクチンで作られた抗体が中和抗体として働く可能性もあって、絶対効かないかって言われたら難しいです。

ウイルスの遺伝情報は変わりやすいということはわかっているので、製薬会社も頻繁にウイルスタンパクのモニタリングを行っており、それに対応するようにワクチンを変化させていってます。

Q.ワクチン接種が広まるとどうなる?

集団免疫が獲得でき、終息に至る可能性もある。

感染症は、病原体が、その病原体に対する免疫を持たない人に感染することで流行します。ある病原体に対して、人口の一定割合以上の人が免疫を持つと、感染患者が出ても、他の人に感染しにくくなることで、感染症が流行しなくなり、間接的に免疫を持たない人も感染から守られます。この状態を集団免疫と言い、社会全体が感染症から守られることになります。
すべての人が自然感染や予防接種によって免疫を獲得する必要はなくて、社会の中である感染症に対する免疫をもつ人がある程度多くなれば、個人間での感染拡大が十分に抑制されることで、流行は終息します。感染症の種類によって、集団免疫を得るために必要な免疫を持つ人の割合は異なります。

コロナウイルスの場合、難しい計算式があって、計算すると70%くらいの人がワクチンの接種が完了すると集団免疫の獲得ができると試算されています。(ただし、ワクチン有効性が想定されているよりもずっと低かったら、全員が接種しても新型コロナウイルスは根絶できないので、さらなるデータの蓄積と継続したモニタリングが必要です。)

ワクチンが行き渡れば、新型コロナウイルスの終息もみえてくるかもしれません。

Q.いつごろから接種が始まりますか?

つい先日、ファイザーのワクチンの輸入が承認されたばかりです。

厚生労働省によると医療従事者の接種が2月中旬頃から始められるように準備を進めているとのことです。医療従事者の後、高齢者、基礎疾患を有する方の順に接種を進めていく見込みで、こちらは早くて4月以降になる見込みです。

ただ、ワクチンは1種類だけじゃないから今後開発活動が活発になればもっと早く広まるかもしれません。

実際に3月にはアストラゼネカのワクチンの輸入承認が検討される予定らしいです。

準備が整えば、「接種券」と「新型コロナワクチン接種のお知らせ」が届き、全額公費で接種を行うため、無料で接種できます。

Q.世界のワクチンの広まり方は?

ヨーロッパを見てみると、イギリスが接種者数1位で、1100万人以上(5人に1人)の接種が完了しています。2位ドイツで300万人程度なので、イギリスがダントツです!

成果は・・・今年に入ってからイギリスでは新規患者数が継続して減少傾向、この1か月で半分以下になっています。

例えば200万人が接種済みのフランスではまだ全然減少してないことを考えると、ワクチン接種の普及により感染者数の減少は見込めるかなって思います。

応募した質問に答えてみた

twitterでワクチンに対する疑問を募集したところ、数名の方からご質問をいただきました。

ひとつずつ答えていきますね(^^)

Q. ワクチン接種の順番、なぜ若者が後回しなのでしょうか?若者が感染を広げているなら、若者からにすべきではと思うのですが、よろしくお願いします。

確かにおっしゃることも一理ありますね。

厚労省のホームページによると、国の基本的な考え方は下記の通り。

新型コロナウイルス感染症による死亡者や重症者の発生をできる限り減らし、結果として新型コロナウイルス感染症のまん延の防止を図る

政府のスタンスとしては、重症化のリスクが高いお年寄りから守りましょうという考え方なのかな?と推測します。あくまで推測ですが、参考になれば幸いです。

Q.ワクチンを1回接種したら効果はどれくらい続くものでしょうか?

これは非常に難問です…(笑)

去年の夏に開発されたばかりなので、データがないから何とも言えないです。

まだ接種が始まって4か月くらいしか経ってないので、もう少し観察期間が必要そうです。

Q.副反応が出た場合の対処法はどのようになるのでしょうか?受け入れ病院の体制とか整っている前提で進めるのでしょうか?

これは気になるところですよね。

副反応に対する基本的には接種した病院や、かかりつけ病院での対応になると思います。また、副反応で病院にかかった場合の医療費の補償や、障害が残った場合の救済制度もあります。厚労省のホームページに載っていますので、参考にしてみてください。

ご質問ありがとうございました!

Q.年配の方はワクチンを打つリスクが大きいと思うのですが、どうでしょうか?

年齢によって効果や副作用の出方に差があるのかは気になるところだと思います。

現在コロナにかかって重症化したりお亡くなりになっている方は大半が高齢者です。発症や重症化のリスクを減らすことができるのはむしろベネフィットになると思います。

ただし、副反応が強く出たときに体が耐えられるかは、もともとの元気具合によるところもありますので、打つか打たないかの判断は医師やご家族と十分に相談して決めるとよいと思います。

 

ご質問ありがとうございました!

Q.40代、既往歴なし、健康(だと思う)な感じの人はワクチン接種は優先順位的にはどんなもんでしょう?それと、今後イベントとかレースとかでワクチン接種済みマストとかになる可能性はあると考えますか?医学的見地だけでは答えにくいところはあると思いますが、個人的意見で良いので~よろしゅう。

貴重なご意見ありがとうございます。個人的意見で答えますね!(笑)

ワクチン接種の優先順位について

厚労省の発表によると、接種の順番は医療従事者→高齢者・・・までは決まっているのですが、それ以降のことはまだ発表されていません。妊婦さんや子供を優先するかどうかについても、まだ安全性に対するデータが不足しており、なんとも言えません。

ただし、40歳健康であれば優先順位は低そうです(笑)

今後は住んでいる地域によっても人口が違うから対応できるスピードも変わりそうだな~とか、順番がくる時期が変わってくるかな~とかはありますが、なんとも言えません。すいません。

イベント参加がワクチン接種済みマストかどうか、について

ワクチン接種済みマストになる可能性は低いと思います。

マストになる人がいるすると、医療従事者や薬局薬剤師・救急救命士などリスク高い人は可能性があると思います。

これは、「従事する者の発症及び重症化リスクの軽減は、医療提供体制の確保のために必要である」という考え方に基づいてのこと。

国のスタンスとしてもワクチン接種は「推奨はするが義務ではない」という位置づけなので、あくまでも接種するかどうかは個人の判断によります。

ただし、接種したからといって行動制限がなくなるわけではないので、引き続き政府の方針に従って行動していくのがよいと思います。

参考文献

MSDマニュアル プロフェッショナル版 COVID-19ワクチンに関する最新情報

厚生労働省 新型コロナワクチンについて

フィラデルフィアこども病院 covid19 vaccine Q&A

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