皆さん、こんにちは!女医サイクリストのもえマグロです(*'▽'*)

今回は妊娠前に運動習慣のあったサイクリスト向けに、妊娠期のロードバイクトレーニングについて解説します☆

健康で、妊娠が正常である場合は、運動を継続または開始しても問題ありません。運動によって、流産、低体重、早産のリスクが高まることはありません[1]

むしろ妊娠期の運動は正しくやればメリットが沢山あるので、この記事を参考に楽しいサイクリングライフを継続してください(*^^*)

妊婦サイクリストのための妊娠期ロードバイクトレーニング

妊娠期の運動の重要性

米国産婦人科学会によると、妊娠期のトレーニングには妊娠期のトラブルを回避したり、安全な出産につながる沢山のメリットがあります[1]

  1. 腰痛の改善、便秘の予防が可能
  2. 妊娠糖尿病・妊娠高血圧症候群・帝王切開を低下させる可能性がある
  3. 適正な体重コントロールにつながる
  4. フィットネス(体力)の向上
  5. 産後の速やかな体重減少に役立つ

運動習慣のあったサイクリストにとっては、身体を動かすこと自体が楽しかったりストレス発散になったりと、身体面だけでなく精神的に嬉しい効果もあると思います。

運動の目的

運動の目的は妊娠期間中の競技力の向上ではありません。無理は禁物なので、あくまで心身のリフレッシュ、健康維持、産後に向けての準備として行うようにしましょう。

基本方針

運動を行う時期

妊娠12週~16週からスタートし、臨月以降は主治医と要相談です。

全妊娠の 10 ~ 15 %におこるとされている自然流産の発生時期のほとんどが妊娠 12 週未満であり、 16 週以降には自然流産がほとんどなくなることが根拠です。

妊娠初期はホルモンバランスが激動し、高体温が続き、疲れやすいです。また、妊娠初期に激しいスポーツをすると流産率が高くなることが報告されているため[3]、運動開始は妊娠中期まで待ちましょう。

強度

強度は心拍数でコントロールします。東大病院出版の若年女性のスポーツ障害に関する調査研究報告書によると、Vo2maxから目標心拍数を算出することができ、20~29歳女性で145~160bpm、30~39歳女性で140~156bpmだそうです[2]

日本臨床スポーツ医学会誌では最大心拍が150bpm以下を基準としているので、「150bpmを越えないように」を目安にするとよいでしょう。

頻度

米国産婦人学会では「毎日30分程度、週5日程度」、日本臨床スポーツ医会では「週2~3回で、1回60分以内」の運動が理想的とされています。

アスリートは産婦人科医の承認を得れば、妊娠前にしていたトレーニングを妊娠後も継続できるとされており、もともと運動習慣のあったサイクリストであれば安全にこなせる頻度と言えます。

また、正常な妊娠経過であっても子宮は収縮したり、日常生活でも腹圧が高まるため、夜より朝の運動が推奨されます[3]

マタニティスイミングなども午前中にスケジュールされていることが多いみたいです。

トレーニング内容

妊婦サイクリストのための妊娠期ロードバイクトレーニング

サイクリングのような有酸素運動は妊娠期の運動として好ましいです。

転倒の危険の少ない自転車が固定されるローラー台を使ったインドアサイクリングやエアロバイクがおすすめです。

3本または4本ローラーや屋外でのライドは落車や事故の危険性があるため、控えましょう。

妊娠中は大きくなったお腹の影響でバランスをとりづらく転びやすくなったり、自分が気を付けていても事故に遭ってしまうリスクがあります。胎児や母体を危険にさらす上、妊婦には麻酔がかけづらく対応が難しくなる可能性があるので、室内で運動しましょう。

その他にも、これまでやってきたスポーツであれば無理ない範囲で可能ですが、お腹に衝撃が加わるようなコンタクトスポーツは禁止です。


個人的にはサイクリングと合わせてウォーキングもおすすめです。紫外線対策、水分補給、体温調節に気を付けて、そしてコロナ対策として人気のないところを一人にならないように歩きましょう(笑)

産前産後は母体から胎児へカルシウムを供給するため、母体のカルシウムが不足してしまうことや、無月経になるため骨密度が低下するリスクが高くなります。骨は重力がかかると丈夫になるので、ウォーキングは妊娠期の(そして遠い将来の!)骨粗しょう症予防にも役立ちます。

また、余裕があればストレッチや筋トレもぜひしてみてください。

奥谷まゆみさん著の「女性の一生に丸ごと活かせる体づくりで変わる産前・産後 マイナートラブルを改善するトレーニングと指導 」では妊娠期に起こるさまざまな変化やトラブルに対して、体づくりからサポートするノウハウが詰め込まれています。具体的なストレッチや筋トレのやり方も写真や図と共にわかりやすく解説されているので、ぜひ手に取って読んでいただきたい一冊です。

運動を中止する症状

以下の症状がある場合は、運動を中止します[1]

  • 膣からの出血
  • めまいや失神
  • 運動開始前の息切れ
  • 胸痛
  • 頭痛
  • 筋力低下
  • ふくらはぎの痛みや腫れ
  • 定期的で痛みを伴う子宮の収縮
  • 膣からの液体の噴出または漏れ

必ず主治医にホウレンソウ!常にやめる勇気をもっておくこと!

妊娠期の運動の基本方針をお伝えしましたが、最も大切なことはあなたと胎児を一番よく診ている「主治医に報告、相談をする」ということです。何かあったときにあなたを守ってくれるのは、残念ながらこの文章を書いている私ではなく、主治医です。

運動を始める前には必ず妊婦健診の際に相談してください。妊娠期間中を通じて妊婦健診の度にこまめに運動状況を伝えられるとより良いです。

そして、「調子が悪ければやらない。無理は絶対しない。」これは常に頭に置いておいてください。


あとがき・・・

産前産後の運動についての知識を深め、勉強すればするほど妊娠期の運動の重要性を知ることになりました。

もちろん子供を産むということは大変なことであり、決して侮ってはなりませんが、強度や時間を管理することで安全に運動は続けられると信じています。この記事が参考になれば幸いです。

~Special thanks~

この記事の作成にあたり、産婦人科スポーツドクターの先生からご助言を沢山いただきました。本当にありがとうございました。

参考文献

[1]米国産婦人科学会 https://www.acog.org/womens-health

[2]女性アスリート外来|東京大学医学部附属病院 (u-tokyo.ac.jp)

[3]妊婦スポーツの安全管理基準│日本臨床スポーツ医学会誌:Vol. 28 No. 1, 2020.

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