こんにちは!女医サイクリストのもえマグロです(*^^*)
先日ご紹介した論文の【簡略版】を作りました★
詳しく知りたい方はこちらを覗いてみてくださいね♪
女性アスリートがピルを使用すると体脂肪率や骨密度は変化するのか?身体パフォーマンスへの影響は?【詳細版】
スポーツの世界では、ピル使用による体組成と身体パフォーマンスに対する影響に関するより多くの知識が強く求められています。
- 女性アスリートがピルを使用すると体脂肪率や骨密度は変化するのか?
- 競技パフォーマンスへの影響は?
この2つについてまとめました。
リソースとなった論文は、2004年に発表され、論文としては古いですが、その被引用回数は100回を超えます。被引用回数が100回を超える論文はこの分野ではおそらく1%にも満たないので、かなり有用な論文といえるでしょう。
背景
月経障害は、特に持久系スポーツの女性アスリートによく見られ、激しい運動によるストレスや不十分な食事摂取(いわゆる痩せすぎ)に関連しています。
月経障害は筋骨格損傷の増加と疲労骨折のリスクを2〜4倍にするためピルは長期にわたる月経障害(無月経や月経回数の少ない少月経)の女性のために医療目的にも頻繁に使用されています。
しかし、ピルを使うことによって体組成の変化や身体パフォーマンスにマイナスの影響を与える可能性はないのか?という疑問への答えは女性アスリートにとっては大切ですよね。
この研究の目的はそれを明らかにすることにありました。
実験の方法
無月経(8人)少月経(5人)の13人の運動選手、正常な月経周期の13人の運動選手、および正常な月経周期の12人一般女性が対象となりました。
ピルを10か月間服用してもらい、その前後で体組成測定や身体能力測定を行いました。
結果と考察
体組成に対するピルの影響
- 月経障害のある運動選手 →体重と体脂肪の増加があり(平均体重増加量は2.4kg)。総骨密度も増加。
- 正常な月経周期の運動選手 →体組成の変化なし。脚の骨密度が増加。
- 一般女性 →体組成も骨密度も変化なし。
考察①
月経障害のある運動選手のみで体脂肪の増加が引き起こされたのは、もともとの体脂肪量が最も少なかったからと思われます。脂肪量のベースラインが低いため、体脂肪の大幅な増加に関連があったと思われます。
しかし、ピル使用による体重と体脂肪の増加の原因となる正確なメカニズムはまだ解明されていません。
骨密度に関しても同様に、ベースラインの骨密度が低いアスリートに恩恵が大きかったです。
また、正常な月経周期のアスリートで脚の骨密度にプラスの効果が記録されたのは、体重をかけることによって骨が強くなるといったことが関連しているかもしれません。
身体パフォーマンスに対するピルの影響
- 月経障害のある運動選手 →身体パフォーマンスに変化はないが、シャトルランテストのみパフォーマンスレベルが6%低下した。
- 正常な月経周期の運動選手 →身体パフォーマンスに変化なし。VO2 maxや持久力に変化なし。
- 一般女性 →身体パフォーマンスに変化なし。VO2 maxや持久力に変化なし。
考察②
アスリートのピル使用による体組成の大幅な変化にもかかわらず、身体的パフォーマンスへの影響はほとんど示されませんでした。
しかし、シャトルランでのパフォーマンスのわずかな低下が見られことは、体脂肪量の顕著な増加が、特に体重調整が重要な持久力スポーツにおいて、運動能力に好ましくない影響を与える可能性があることを示唆する結果となりました。
特に、「減量してPWRを高くした結果、無月経になってしまった」アスリートではピル内服によってもたらされる不利益も排除できません。しかし、疲労骨折のリスクや今後の人生を考えれば、ピルを内服しつつ体重コントロールをするのが最良の策かもしれません。
まとめ
女性アスリートのピル内服は、身体パフォーマンスに悪影響を与えることなく、体組成に主に有益な効果をもたらすことが実証されました。 スポーツの世界では、ピルの使用が身体的パフォーマンスを損なう可能性があるという大きな懸念があるため、この研究は非常に参考となる調査結果をもたらしました。
最後まで読んでいただき本当にありがとうございます。
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