皆さん、こんにちは!女医サイクリストのもえマグロです(*^^*)
今回は女性アスリートならではのトピックである「スポーツと月経」についてまとめてみました。
競技をする上でどう付き合っていけばいいのか?レースにぶつかってしまったときの対処法は?
まずは身体の変化を学ぶこと、いろんな選択肢を知ること、その中で自分に適した対処法を探っていくことが大切だと思います。この記事がその一助になれば幸いです。
月経(生理)とは
子宮の内側の膜(子宮内膜)が剥がれ落ち、それに伴い出血が起きる現象のことです。
月経は思春期に始まり、約1か月の周期で起こり、妊娠中を除けば生殖可能な期間ずっと続きます。
ですので、ほとんどの女性アスリートは無関係ではありません。
身体の中で起こっている変化
子宮内膜の排出
月経期には子宮内膜が剥がれ落ち、体の外へ排出されます。
この時子宮が収縮しますが、この収縮が下腹部や腰の痛みの原因になります。
子宮は筋肉でできており、血流が豊富な臓器のため、1回の月経で約100ml(20~140ml)ほどの経血がでます。
剥がれ落ちて薄くなった子宮内膜は、月経終了後から次の月経までにまた厚くなり、約28日の周期で次の月経が始まります。
ホルモンの変化
月経に関わるのはエストロゲンとプロゲステロンというホルモンです。ここで大事なのはそれぞれのホルモンがどういった働きをしているかではなく、月経周期に伴い増えたり減ったり変化しているということです。
このホルモンの増減が、気分の落ち込みやイライラといったメンタル面、体重増加やむくみの原因になります。
メンタルの安定や体重管理は競技をしていく上で大切ですよね。
だから、何が原因でどういう変化が起こっている。そういうときは練習をどうするか、レースにぶつかったときはこう対処する…という道しるべがあれば心強いですよね。
そもそも生理中に運動して大丈夫なの?
医学的には大丈夫です。
多くの研究では月経がパフォーマンスに影響を及ぼす生理学的な理由はないと示しています。
しかしながら、個人的な経験から、メンタルの変化や月経痛などはパフォーマンスに影響を与える可能性が十分にあると思います。また、激しすぎる運動は腹痛を助長することがあります。
(わたしは生理期間中もついつい追い込んでしまい、あとでヤムチャ状態になります)
とはいえ、生理中の運動は悪いことだけではありません。
生理中であっても軽い運動であれば、月経痛が緩和することがあります。
ちなみに、日常的に運動している方が腹痛などの月経痛症状は緩和されるという研究結果もあります。
いずれも運動により全身の血行が良くなり筋肉が柔らかくなるため、子宮収縮が弱まるためと考えられています。
また、運動によって生成されるエンドルフィンや他のホルモンは、気分状態を改善し、暴飲暴食を防ぐ役割もあります!
なので、たとえ月経中であっても制限はありませんが、軽めのサイクリングにするなど、その時の体調に合わせて工夫してみるのはいかがでしょうか。
月経に伴う症状、おすすめ市販薬
月経痛
子宮の収縮に伴う腹痛、腰痛などが代表的です。
痛みの程度は個人差があるだけではなく、そのときどきによって変わりますよね。
痛みの対応は、痛み止め内服です。腹部を温めたり漢方などもありますが、今回は生理期間中にサイクリングイベントやレースが被ってしまったときの対処法をメインにお伝えしますね。
ロキソニン
月経痛には一番鎮痛効果があると思います。6時間空けて1日3回程度であれば安全に使えると思います。
胃が荒れることがありますので、空腹時の内服は避けましょう。
頻用すると腎機能が落ちると言われていますが、月経痛の痛み止め程度の使い方であれば通常問題になることはありません。
ロキソニンの市販薬は以下のようなものです。
アセトアミノフェン
ロキソニンよりは効果は劣りますが、ロキソニンよりも胃や腎臓には優しいと知られています。
痛みがおさまってくる月経3,4日目だとこちらでもいいかもしれません。
また、わたしは高校生以下であれば、こちらを処方することが多いです。
アセトアミノフェンの市販薬は以下のようなものです。
ホルモン変動によるコンディション変化
自転車のような持久力が必要とされるスポーツではエストロゲンが高い時期(排卵の前、つまり月経が終わった後)にパフォーマンスが向上するという研究がありました。
エストロゲンが高い月経の後にサイクリングタイムトライアルを行った場合、その他の時期よりもわずかにタイムの短縮がみられたそうです。これは、プロゲステロンが高いと身体の代謝能力があがり、内臓がヒートしやすく(上のグラフを見てもそもそもの基礎体温が高いことがわかりますよね)、より疲労を感じやすいことが要因と考えられています。
また、エストロゲンが高いときは筋力トレーニングが効果的な時期です。
しかし瞬発系の競技ではエストロゲンが高い時期に組織損傷が起こりやすい(=怪我をしやすい)という研究結果もあります。エストロゲンが高い時期は関節や筋肉が緩みやすいのだそうです。
全体として見ると、女性、スポーツ、月経に焦点を合わせた研究はまだ数が少なく、女性の体が月経サイクルの間に変化する一方で、パフォーマンスが大幅に向上または低下するといったエビデンスレベルの高いものはありません。
決定的なものはなく個人差も非常に大きいですが、月経周期の特定の時期に実施すると、ある種のトレーニングがより効果的である可能性はあります。
例えば、月経期間中は長時間乗ることを嫌って「短時間・高強度」の練習で済ませてしまうライダーもいますが、その逆が快適だと感じる人もいます。
試行錯誤を繰り返しながら、最適な方法を自分自身で見つけていく必要があります。
本気で競技に取り組みたいと考えている人は、月経周期と自分のパフォーマンスの関係についてしっかりと把握しておくことで、競技レベルが違ってきてしまうと思います。次の記事で「ピル」の服用についてもお伝えしていこうと思いますが、狙ったレースの前に月経がくるようにするのか、それとも後にくるようにするのかを決めるのにも役立ちます。
経血漏れはどう対応してる?
生理中の経血漏れ対策ってどうしているの?
女性同士であってもなかなか直接は聞けなかったり、聞く機会がなかったりする話題ですよね。基本的にはナプキンかタンポンを使用している人が多いと思いますが、自分的には自転車を乗るときに限っていえばタンポン一択です。
タンポンが優れていると思う理由
- ナプキンのようにずれない
- 汗をかいても蒸れにくい
- 摩擦もないので肌が荒れにくい
タンポンで痛みが出てしまう人はナプキンでも仕方ないのかなぁと思います。
また、万が一のために黒いサイクルパンツを着用することをお勧めします(笑)
まとめ
女性アスリートが避けては通れない、月経と運動についてまとめてみました。
月経は様々なメンタルや身体の変化を伴いますが、運動しても医学的には問題ありません。
むしろ月経痛やイライラは軽い運動で緩和されることもあるようです。
ホルモンの変動によってパフォーマンスが変化するといった研究もあり、月経後1週間のエストロゲンが高い時期は比較的高いパフォーマンスを得られる可能性があります。
イベントやレースが重なってしまったときは、ロキソニンなどの鎮痛薬を使用し、タンポンで経血漏れ対策をしましょう。
内容が盛りだくさんになってしまったので今回はここまでです。次回は「ピル」と「無月経」についてもお伝えしていこうと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!