こんにちは!女医サイクリストのもえマグロです(*^^*)
先日、近くの婦人科を受診し、ピルをもらってきました。
そのとき受けた説明に補足を加えつつ詳しくまとめてみました。
この記事を書くのは勇気がいることだったのですが、ピルを使ってみようかなと悩んでいる女性アスリートの参考になればいいなと思います。
ピルを使おうと思ったきっかけ4つ
わたしがピルを使おうと思ったきっかけは4つあります。順番に説明してきますね。
1. 生理痛を緩和したい
私の場合、月経は一定周期できちんときています。
生理痛の程度は「初日は鎮痛薬を使わないと痛みで仕事に集中できない」くらいです。
「なんとなく腰が少しだるいなぁ」という人から「痛みが強くて寝込んでしまう」という人まで症状の重さは様々で、さらに「今回は辛かった/楽だった」というようなこともあったり。人と比べられないから、判断が難しいですよね。
重症度スケールもあるので、気になる方は参考にしてください。
ちなみに3点以上だと、婦人科への受診が推奨されています。
2. 土日のレースは生理フリーがいい
ホビーレーサーでもプロ選手でも、レースは週末に行われることが多いです。
せっかくレースにエントリーしたのに、生理のせいで思うように力が出せなかった…そんな苦い経験は何度かありました。
また、レースに生理が被るかもしれないという不安や、男子選手と遠征に行って気を遣う、宿泊先の共同浴場/温泉に入れない、など様々な悩みからも解放されたかったです。
3. 一流選手も使っている
「私がアメリカでプレーしていたときは、チームメートのほとんどが低用量ピルを服用していたので、抵抗はありませんでした。サッカーの技術不足や試合前の緊張は本人の努力次第ですが、月経周期や生理痛は努力や根性では克服できないんです。『良い対処方法があるなら使おう』という気持ちでした。ドーピング検査にも問題のないものを処方してもらっていました」
https://doors.nikkei.com/atcl/wol/column/15/101700153/121200002/
なでしこジャパンの元キャプテンの澤穂希さんのコメントです。
「アメリカではチームメイトのほとんどが使用していた」という表現からもわかるように、海外ではかなり普及しているようです。
ちなみに2018年に国連が発表した世界のピル推定服用率は以下の通りです。日本は2019年の段階で4.2%です。
4. 婦人科疾患のリスクを減らせる
卵巣がん、子宮内膜症、結腸直腸癌のリスクを低減します。
ただ、乳がんや子宮頸がんのリスクは増加すると言われているので、これらの既往がある人は使いづらいです。
乳がんや子宮頸がんの検診はしっかり受けるようにするのが大切です。
ここを詳しく書きすぎると本題からそれますので、興味のある方はlancet(vol. 371january 26 2008)を読んでみてくだい。
また、前回書かせていただいたピルの記事に寄せられたコメントで、少ないながらもピルを使用している女性の自転車乗りがいることがわかり、彼女たちは「ピルのおかげで月経も楽だし、使ってみて良かった。」と言っていました。
使用者が身近にいると知れたことも背中を押すきっかけになりました。ありがとうございました。
受診の流れ
1. 問診
- これまでした病気や飲んでいるお薬…病院にかかると聞かれる程度のもの
- 目的…避妊、生理痛の緩和や周期のコントロールなど…特に避妊目的か否かというところははっきりと聞かれます。服用するピルに含まれるホルモンの量が違ってくるためです。避妊を目的としない場合は超低用量ピルの使用が可能です。
2. 深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)の説明を受ける
副作用として深部静脈血栓症のリスクが高くなると説明を受けます。説明を受けました、という同意書にもサインします。
深部静脈血栓症とは下肢の静脈に血の塊ができてしまう病気で、脚が腫れたり痛みがでます。
エコノミークラス症候群としても知られ、脚を動かさずにじっとしていると血流がよどんで血栓ができやすいです。
深部静脈血栓症は無症状のことも多いため発生頻度の正確な把握は難しいのですが、海外の疫学調査では年間1万人あたり1~5人です。従来は低用量ピルを服用するとそのリスクは3~6倍になると言われていましたが、現在発売されているピルは含まれるホルモン量が少なくなってきており、年間1万人あたり3~9人程度との報告があります。(日本産婦人科学会より)
ここからは医師としての主観ですが、日々さまざまな薬を処方しておりますが、薬の副作用のリスクとしてはごくごく低いと考えます。(もっと高率に副作用がでる薬はごまんとあります(小声))
脱水でも血栓症のリスクはあがりますので、ピルを服用していてもしていなくてもアスリートの皆さんは水分摂取はきちんと行いましょうね!
3. 血液検査をする
深部静脈血栓症のリスクがないか血液検査でチェックします。
d-dimerという項目を測ることで血栓症のリスクを判定できます。d-dimerが異常高値であった場合は下肢のエコー検査を行い、問題なければピルの服用が可能です。
血液検査は最低6か月に1回は行います。
4. 服用するピルを決める
ピルにはさまざまな種類があります。従来の低用量ピルに加えて、3~6か月もの間、月経を止める超低用量ピルもあります。
長くなってしまうので、種類や選び方については次の記事でご紹介しますね。
5. 支払いと次の受診
1回目の受診の会計は4400円でした。(検査料1500円、ピル1か月分2500円)
次の受診は1か月後です。血液検査の結果聞きとピルの使用感(効果や副作用)をチェックします。
以上、長くなってしまいましたが、ピル服用までの流れでした。
ピルを使用しても最初のうちは不正出血があったり、副作用がでたりする可能性があります。オフシーズンのこの時期に自分に合ったものをみつけたいという思いで受診しました。
生理痛や月経周期の乱れで困っている女性アスリートがピル服用を考えるきっかけや判断材料になれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!